子育て支援は日本を救う

「今日の日本に現存する多くの問題は、互いに繋がりがあるため、一朝一夕では解決出来ない」

これは事実だと思います。

簡単に解決出来る問題であれば、多くの国民が長い間苦しんでいる、なんてことは、あり得ないはずですから。

 ただ、これら日本が抱える問題(少子高齢化の加速、財政難、自殺率の上昇、待機児童の増加など)に相互の繋がりがあるならば、裏を返せば「共通する根本の原因を見つけ出し、対応策を講じることが出来れば、ドミノが倒れるかのように解決出来る」という可能性を孕んでいる、とも言えます。

 では、根本の原因への「対応策」とは何か。

 そんな疑問を、統計学の観点から解き明かしたのが、京都大学大学院准教授・柴田悠さんによる『子育て支援が日本を救う -政策効果の統計分析-』です。

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こちらは、タイトルの通り「子育て支援が日本を救う」という論理的な仮説を、様々なデータの分析を通して検証していく内容となっています。

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この本を読んで感じたことを何点か。

 

子育て支援はスーパーヒーローではない
子育て支援が日本を救う」というのは、間違いないと思います。
子育て支援を行うことで、待機児童問題が解消され、労働意欲のある女性が社会進出を果たし、日本の労働生産性GDPは上昇し、相対的貧困率も低下するはずである、ということが統計分析によって実証されているからです。

ただ、子育て支援を行えば必ず日本が良くなる、と考えるのは早合点。

子育て支援はあくまで「第一歩」。
ドミノ倒しで言えば、最初の1コマ。
次のドミノが倒れなかったり、倒れたとしても正しい方向に向かわなければ、全てが水泡に帰してしまうことでしょう。

最後の1コマまで倒して、明るい絵を完成させるためには、国民一人一人が理想の社会を考え抜き、それに向けて行動していく姿勢が求められると思います。

 

②今、まさしく子育てに奮闘している全ての方に感謝をしたい
現在の日本で子育てをすることは、非常に大変なことだと思います。
保育園に預けるだけでも一苦労。
預けられなければ待機児童。
預けられても、子供が熱を出せば仕事を切り上げて引き取りに行く。
国は、少子化を問題視しているはずなのに、2人目、3人目を産んでもくれる補助金は雀の涙。
仕事に疲れて帰っても、家事と育児で休まる時間が無い。

これでは子供を産みたい、と思う人が増えないのも無理はありません。

仮に、政策で母数を増やすのが難しいのであれば、せめて今現在子育てをしている方々に対しては、国として感謝の意を表明するべきではないでしょうか。

変だと思うかもしれませんが、自分は親子連れの方とすれ違う時には必ず「ありがとう。頑張って下さい」と心の中で思っています。
今の自分には、そんなことしか出来ませんが。

 

統計学が最強の「学問」である
たとえ自分の頭で考えて「これが絶対に正しい!絶対に実行すべきだ!」と感情に任せて訴えたところで「過去5年の推移はこのようになっているが、この時点で、この政策を実行すれば、今後何%の変化が生じる」という論理には、なかなか勝てません。
(仮に、その考えが正しかったとしても)

これは、選挙演説などを見ていて感じる人も多いのではないでしょうか。
涙ながらに訴える政治家と、事実を基に冷静に語る政治家の、どちらが信頼に足るか…
それくらい「数字、ファクト、ロジック」は強いということです。

 

④ただ、統計学だけでは動かない現実もある
例として「涙ながらに訴える政治家と、事実を基に冷静に語る政治家」を出しましたが、時に両者の勝敗が逆転する場合があります。
時代の趨勢や、民衆の感情、政治家のカリスマ性、または本性の露呈、等、様々な要因は考えられますが、要は「数字だけで人は動かない」ということです。

時に、感情で物事を決定し、失敗することもあれば、成功もある。
そのようにして世界が発展してきたのも事実です。
統計学は最強の「学問」であるけれど「実践」という観点では、必ずしも最強ではない、ということも心に留めておかなければいけません。

 

⑤ある側面だけを見て物事を判断してはいけない
仮に、日本の経済成長率が年々上昇している、という事実があったとします。
これだけを見ると「成長」という言葉から「日本もどんどん豊かになっていて素晴らしいじゃないか!」と考えてしまいがちです。
確かに経済が成長することは、国家にとって良いことです。

ただ、そもそも「経済成長率」とは「国内人口一人当たりの物質的豊かさの増大」を表します。
ここで肝心なのは「国内人口一人当たりの」という言葉です。
「国内人口一人当たり」ということは、つまり「平均的な」ということです。

「平均的な」ということは、例えば「国民の大半は貧しいままで、少数の億万長者の資産だけが増加している」という構図も成り立ってしまいます。

今の日本(もしくは世界)が、まさにその道に進んでおり、いわゆる「格差社会」が加速しています。
(『21世紀の資本』の中でピケティが危惧している事態)
格差社会の加速とは、つまり「豊かな人は、より豊かに。貧しい人は、より貧しく。」が以前より顕著に現れている、ということです。

おそらく、今後も日本の経済成長率は、ネットの発達により、更に上昇するでしょう。
ただ、少子高齢化による「労働人口の減少」に歯止めを掛けない限りは、成長率に反して相対的貧困率も上昇しかねない、ということを忘れてはいけません。

 

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この本を読むことで、本当に多くのことを考えさせられました。
今のところ「今年NO.1」の本なので、出来れば1人でも多くの人に読んでもらい、日本の将来を考えるきっかけにして欲しいです。

 

自分も、行動します。
やっぱり自分の生まれた国、日本が大好きなので。